導入事例
- スピード警告装置が“心のブレーキ”に
フォークリフトの速度低速で安全確保 - 株式会社 日ピス福島製造所 様
「安全の番人」が職場単位で安全指導を徹底
㈱日ピス福島製造所は、ピストンリングなど自動車エンジン部品を製造する日本ピストンリング㈱のグループ会社。福島県川俣町の事業所で主にシリンダーライナーやバルブシート、ピストンリングを製造している。世界でも屈指の高品質を誇り、日本の全自動車メーカーはもちろん、米国や欧州の主要自動車メーカーにも採用されている。日本ピストンリンググループはタイや米国などの海外に生産拠点を持つが、福島製造所がバルブシート製造のマザー工場となり、海外拠点に人員を派遣して現地指導も担っている。
同グループでは、自動車産業を支える企業としての社会的責任を担う意味もあるのだろう、社の内外を問わず「交通事故ゼロ」の推進を大きな目標に掲げている。日ピス福島製造所でも工藤潤工場長が、「構内でも交通事故、ひいてはフォークリフトの事故も絶対に出さない」と繰り返し社内で呼びかけてきたそうだ。工藤工場長は、着任した2009年から安全活動の改革に着手し、ヒヤリハット撲滅などKYT(危険予知訓練)活動を展開してきた。中でも特筆されるのが「安全の番人」だろう。各職場の班長など約50人を安全のリーダーとして任命。安全環境グループの寺島浩副主査が「番人」たちの教育を担当し、職場に戻った彼らが同僚や部下を指導する。作業時は安全の番人が現場に常駐する態勢も整えている。教育や普段の作業を通じて日頃から事前予防の考え方が、製造所のすみずみまで徹底されているのだ。
自分では見えないフォークリフトの速度超過
こうした安全活動はフォークリフトも対象とし、定期的に安全講習を実施しているが、そこでまず課題となるのが「スピード」だ。工藤工場長は着任当時の状況を思い起こし、「競争をしているのかと思うくらい走り回る車もあり、車体の傷も絶えませんでしたね」と述懐する。 工場内ではフォークリフトが工程間で重量物となる部品パレットを搬送する場面が多い。そのためスピードを出し過ぎると、ちょっとしたカーブでも遠心力で転倒や荷崩れする危険がある。また人が目の前に飛び出した時も、急停止できない危険性がある。 当製造所における制限速度は、屋外で10km/hと決めている。しかし実際に制限を守っているかどうかは「見えない」状況にあった。そもそもエンジン式フォークリフトにはスピードメーターがなく、オペレーター自身は走行速度を把握できない。タイヤに白い十字マークを付ける対策を講じていたが、スピードを出し過ぎて十字マークが見にくくなるのは周囲だけで、オペレーター自身には分からない。フォークリフトの制限速度を守らせる、安全運転の意識付けが不十分だったのだ。
危険=速度超過を自身と周囲に「見える化」
その解決に道筋を付けたのが、今回導入したツールマートの「スピード警告装置」だった。フォークリフトの走行スピードをセンサーで検知し、2段階で警告する機能を持つ。1次警告の“注意喚起”では、8km/hに達すると黄色の回転灯が点灯。2次警告の“速度超過”では、制限速度の10km/hを超えると赤色の回転灯が点灯し、警告音を出す。この速度は福島製造所の設定値で、導入の際に1km/h単位で任意に設定できる。
「これならオペレーター自身がはっきり速度超過に気付ける。それが導入決定のポイントでした」と、総務グループの鈴木義弘グループリーダーは説明する。
導入を提案した寺島副主査も「自分も周囲の作業者も速度超過に気付くので、効果があります」と口をそろえる。いわば速度超過=危険の“見える化”だ。「設定速度は任意に設定できますが、オペレーターには変更できないのが良い」と鈴木リーダーは付け加える。
福島製造所では、主に屋外搬送用のフォークリフトにスピード警告装置を設置した。屋外には緩い勾配があり、気付かぬうちに加速し、速度を超過するリスクが高かったからだ。
(1)スピード警告装置を取り付けたフォークリフト (2)運転席後部の赤色回転灯 (3)前部の黄色回転灯は運転席からすぐ目に付く
スピード警告装置による作業イメージ
「心のブレーキ」で意識改革とモラル向上に効果
導入から数か月が経つが、現場では速度超過が確実に減少し、フォークリフトの傷も減ったという。工藤工場長は、「速度を超過するとランプと音ですぐ分かるし、周りの目もあるので自ら速度を守ろうとするようです」と、オペレーター自身に装置の働きを納得・理解させやすい点をメリットに挙げる。「このスピード警告装置が、“心のブレーキ”をかけてくれるんです」オペレーターが装置の設定内のスピード感を習得するのに時間はかからなかった。スピード警告装置が「意識改革とモラル向上」のツールとして有効に機能し始めたのだ。福島製造所におけるフォークリフト安全活動はスピード警告装置の導入にとどまらない。工場全体で「安全総点検」を実施し、毎月安全に関する点検項目を5段階評価している。2014年度は赤チン災害もゼロを達成した。工藤工場長は「“危険に気付く人作り”が製造業における安全確保のポイント」と指摘しつつ、今年度は点検項目をさらに強化して「設備と作業の本質安全化」を掲げ、目標達成に向け邁進中だ。
速度超過はすぐ分かるのでコミュニケーションがとれる