フォークリフトの安全運転コラム

vol.4|ミーティングと現場力で安全をつくる

文 / 丸山 利明 物流技術研究会
大手運送会社に入社後、主に重量物取扱作業に従事する傍ら、社内作業指導員制度設立の一役を担う。
全日本トラックドライバーコンテスト準優勝。全国フォークリフト運転競技大会優勝。
平成15年、現タカラ物流システム(株)入社、平成22年に常務執行役員。
飲料系物流会社と物流技術研究会を設立し現場指導に努力。
陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)専任講師、自動車事故対策機構(NASVA)専任講師などを務める。
現在、(株)TM安全企画を設立し活動中。

安全にボトムアップは不可欠

危険の芽は至る所に息を潜め隠れているため、日々見つけては摘み取り続けなければなりません。職場においては、「危険かも」という感受性(発見)と、「解決しよう」という現場力(実行)こそがキーポイントになります。そしてこの現場力には職場のボトムアップが不可欠です。
ただ残念なことに、何もしないで職場が突然ボトムアップする事はありません。ボトムアップには、①コミュニケーション(ミーティング)、②自主性(自ら決めて自ら動く)、③活性化(成果・達成)、④ボトムアップ(現場力)と必要なステップがあり、この繰り返しだと常々感じています(図表1)。  ですからまず最初はコミュニケーションの場であるミーティングが重要な出発点となります。ミーティングの良し悪しは、安全活動に大きな影響を与えると言えます。

図表1ボトムアップへのステップ

まずはミーティングが出発点

フォークリフトは単独作業が多く、暗黙の了解で作業するため、それが事故につながることもあります。フォークリフトで労働災害が起きた会社の話を聞いてみると、この会社では全くミーティングは行われていませんでした。教育も何も行き届いていませんでした。
そもそも誰でも初めからコミュニケーションが上手なわけではありません。ミーティングの中で少しずつ訓練されてくるものです。だからこそ朝礼をはじめ、昼礼・夕礼や作業前ミーティングでのコミュニケーションが重要になるわけです。

意欲的な作業前ミーティング

ある会社の作業前ミーティングでは、皆待っていたかのように前向きな意見や代替え案が飛び交います。前の日から現場のホワイトボードに、翌日の議題を書いて準備しているからなのです。「皆さんの意見をお聞かせください」と。さらにミーティングで決まったことは簡潔にまとめて貼り出し、ルールとなります。自ら決めたルールだから全員が守り事故もありません。
また毎日自主的にリフトマンの意見を取り入れ倉庫内レイアウトを行っている職場では、年間45万トンの物量があっても物損はほぼありません。これ以上入らないくらいの物量になる事態でも、現場が臨機応変に対応します。リフトマンが自分で決めたことだからです。
自ら決めて実行することが、いかに重要なことかが良くわかります。こうした自主性は積極的なグループ活動へ発展し、安全だけでなく作業効率・業務改善にもつながっていきます。

グループ活動が会社を変える

3つの倉庫の人員配置をグループで考え、効率化につなげた活動例もあります。その職場では倉庫ごとに繁忙期が異なるため、荷役の終了時間もバラバラ。一緒に終わり一緒に帰ろうと考え、各グループ長が状況を話し合い、違う倉庫も手伝えるようにしました。コミュニケーションも増えたため各現場の破損事故も減りました(図表2)。現場の効率化は企業の強みでもあり経営に直結します。積極的なグループ活動は会社を変えると言っても良いでしょう。
ミーティングを仕切るのも、自主的な教育や指導も現場が担っています。従って管理者は常に現場に声を掛けることが大切です。そして現場が何か言いたそうな時は、どんなに事務作業が忙しくても手を止めて必ず話を聞いてください。「いま忙しいから後にして」との不用意な一言で現場は二度と話さなくなり、モチベーションを挫くことになります。

図表2グループ長のミーティング

教育や人材育成へも注力を

このようにコミュニケーションによって現場のモチベーションが高まり、ボトムアップへつながっていくわけですが、こうしたノウハウは、人材に頼るところが大きく、マニュアル化することも困難です。人材育成はボトムアップとともに重要な課題です。
またボトム情報を吸い上げ、処理する時も正しい知識が必要です。危険の元となる行動や状態は、作業者や管理者の知識不足で起きることが多いからです。知識不足は安全の根幹を揺るがしかねません。ボトムアップして現場力をさらに高めるためには、しっかり教育することも決して忘れてはなりません。
次回では管理者や作業者が学ぶべき社内の安全教育について触れていきます。

ツールマートの
「フォークリフト用安全対策商品」